1.0 エクゼクティブサマリ

セマンティック技術は次 世代のWebすなわちセマンティックWebの推進源であり、スマー トデータのマシンリーダブルウェブと自動化されたサービスは、Webの現在の能力を遥かに超 越して拡大する。

eGovコンファレンスに於ける セマンティック技術より(200398)

 

セマンティック技術は連邦政府におけるより困難な情 報技術課題の多くを解決できる可能性を有している。 その一つの例は環境保護局であり、この局の主たる役割は、子供の生活環境をより良く改善する為に公共 の健康データと環境データとを調和させる事である。 子供は環境汚染に対して大人より非常に感受性が高いので、公共の組織は子供の環境品質と子供への影響 に正しく関与する必要がある。 インターネットへのアクセスビリティとその他の情報技術の進展に伴い、生活環境における危険に対する世論の懸念の増大は、 公共組織や政府の組織が公衆衛生と環境に関する日々の最新の情報に対処する事が要求される事態になっている。 しかし、これ等の期待は連邦政府の持ってい る現状の情報技術ツールやアーキテクチャでは充分対処できない。

この問題はリソースの問題ではない。 現在の重要な リソースは子供に対する環境汚染の健康に対する危険情報をアクセスする為のデータの収集と分析に費やされている。 政府の部局、機構および第三者の間の情 報共有の現状に加えて蓄積されたデータに対する知的問合せ、推論および原因究明の為のツールの技術レベルは、これ等の期待に応えられるものではない。

公衆衛生と環境に関するデータは色々なソースから送 られてくるが、そのソースの多くは互いに連携していない。 語彙やデータの形式が良く分からないものであったり、不統一であったりする。 特に組織を跨る 場合(公衆衛生局 vs. 環境団体)、これが顕著である。 データ値間の構造や関係性の 場合、あるデータ集合から他のあるデータ集合へと一致させる事は難しい。 これ等のデータセットを再評価したり、再編成したり、標準化したりする事は、時 間が掛かり又誤りを生じる元凶となる。 現在、この種のデータを横断的に知的検索したり、合理的に推論したりするツールは存在しない。

 

公正に見て、物理的なコンピュータの連動技術や大量 データの高信頼且つ高度に安全な方法での交換する技術に関しては非常に大きな進歩が見られ、多くの有名ベンダが色々なデータベース、アプリケーション、 ネットワークおよびコンピュータを結合する為の実績あるミドルウェアソリューションを提供している。 しかし、これ等の技術はアプリケーションや色々な情 報の塊を結合し、データを移動したり出来るけれども、情報システムを結合する場合における現実の難問に対処しているものではない。 すなわち、ITシステムを全面的に見直したり、もしくは、当該組織 の運用方法の根本的変更をすること無しに、或るシステムが他のシステムの中の情報を、透過的、タイムリー且つ独立に利用したりする事を可能にするものでは ない。

 

これを可能にする為には、情報の論理的な形式変換が 必要である。 すなわち、或るシステムでは当該情報が何を意味し、そして、どの様に利用されるか、又、他のシステムの中で、当該情報が何を意味し、如何に 利用されるか理解する事が必要とされる。 これが、公衆衛生と環境とに関する利用可能なデータを合理的に利用する上での大きな障害である。

目標はシステムを結合させるだけではなく、それらの システムの中のデータと情報とを相互に機械的に処理可能にする事と人間が理解する事とを可能にする為に、相互互換とアクセスとを可能にする事である。

この問題を解決する為の試みとして、米国環境保護庁(EPA : Environment Protection Agency)の中で、セ マンティック技術を用いて、米国疾病予防管理センタ(CDC : Disease Control and Prevention)のセンタの情報をEPAの情報と州のパートナからの情報とを結合する一つの パイロットプログラムが進行中である。 それは、EPAが「私の子供は環境毒素から守られているの?」と 言った市民の質問に答えられるようにする事を目差すものである。(Sonntag 2003) このパイロットシステムの目的は本質的に、膨大な 人間の考察知識を有するより拡張性の高い機能を首尾良く装備すると言う技術開発であるけれども、全国の数百万の子供の健康と自立とを改善する大いなる可能 性を有している。 毒素排出源の可能性を迅速に特定し、それによって影響を受ける場所と影響の程度とを知り、そして、効果的な環境浄化作業の優先付けの3つが、政府機関と産業界とこれ等の活動の支援者(子供、親、及び、社会のその他の総てのメンバ)との基本的優先事項である。

 

このストーリは、連邦政府が直面している膨大なITチャレンジの構想の一つである。 連邦政府の複雑 さ、連邦政府のデータ装置のサイズ、及び、州や地方や部族政府機関に結び付けられた連邦政府の組織、更には、増えつつある私企業や非政府組織(NGOs)に結び付けられた連邦政府の組織は、システム、アプ リケーション及びデータを連携させた中で、必要なものをより早く見つけ、安価で且つより信頼性の高い方法を実現するよう圧力を受けている。 政府部門及び 第三者間およびそれらの中の情報の離れ小島を結合する事は、政府サービスの改善、財政と流通とを合理化し、複雑な機械の運用の信頼性の増大、人々の健康と 福祉の推進、ネットワーク中心の防衛能力(net-centric defense capabilities)の実現、更には、我が国の安全を保障する為のキース テップであると見られている。

 

広範囲に亘る情報の相互互換性を実現できる事は、セ マンティック技術に対して多くの研究者、思考リーダ(thought-leaders)及び実践技術者が抱いている利点の一つである。 し かし、手段が無ければ、単なる利点でしかない。 より表現力のある記述法、よりアクセスがし易く且つ自律的な情報の上部に構築される知的検索、知的推論及 び真に適合可能なコンピューティングの実現が近づいていると見られている。

 

セマンティックコンピューティングの分野に於ける開 拓者達は、既に数年に亘って仕事をしてきたが、2004年の初めにW3Cにより二つの新しいプロトコルの承認がされたこと は、セマンティック技術の商用化の為の重要なマイルストーンである。 更に、セマンティックWebの目標に向って幾つかの開発が行なわれている。 W3Cの言葉に従うと、セマンティックWebイニシャチブの目標は、データ交換の為の普遍的な媒 体を形成する事で、現在のWebと同様な広がりを有する。 セマンティックWebとは一つの構想であり、機械により処理される事が出 来るWeb上で定義されリンクされたデータを持つ事である。  これは、表示の為だけのデータではなく、色々なアプリケーションに跨って自動化、統合化及びデータの再利用を可能にする為のものであり、それによって、情 報の意味の力をフルに利用可能となる。

情報技術に於けるこれ等の新しい機能は、初期の開拓 者による重要な仕事と投資無しに獲られたものではない。 セマンティックコンピューティングは、階層型データベースからリレーショナルデータベースに、ま た、手続き型プログラミング技法からオブジェクト指向アプローチに移行した時と同様に、セマンティックベースのアプローチの意味や機構を人々が理解するの には多少時間を要するであろう。 しかし、何れ人々はこれ等の新しい技術やアプローチの力を理解するに違いなく、技術革新の第一段階で既存のIT問題領域の多くに対して目覚しい効果をもたらすであ ろう。 技術革新の継続は、ユーザ間、システム間及びネットワーク間での情報共有と交 換の為の基盤に於ける劇的な能力向上をもたらすであ ろう。(Fromm and Pollock 2004)

数年のレンジで見ると、これ等の技術革新は、メイン フレーム、パーソナルコンピュータ、イーサネット及びワールドワイドウェブの初期のものがもたらしたのと同様なコンピューティングに於ける新たな波を起こ すことが約束されている。

 

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