6.3 オントロジ

正しいオントロジを実現する事が、しばしばセマンティックを基盤とするプロジェクトの隘路要素となる。データベース設計の時以上に、オントロジ作成は、高度に特殊化された分野の一つである。熟練した技術者が充分いるか否かだけでなく、オントロジ作成には、ある概念領域を把握するのに必要なオントロジを実現するのにかなりの時間を必要とする。結局、最初から何かを作る代わりに既に使われている既存のものを見直し、活用を図る事が重要である。流用可能な既存のオントロジは、前に述べた名前のオントロジモデリングツールに密接に関係している事が多い。故に、それらのオントロジの活用は、該当するモデリングツールのライセンス状況次第かも知れないが、その努力をする事は無駄ではなく、オントロジ開発の可能性を広げる事になる。

その他のオントロジは、商用目的及び非商用目的に利用可能なフリー且つオープンなものであろう。それらは、LinuxJBossWikipediaMusicbrainz及びその他のオープンソースソフトウェアやオープンなデータリポジトリと同様な性質のものである。

 

現在のオントロジ開発の努力は、スコープや規模において変化に富んでいる。決算報告書又は医療記録の整合の様なローカルな実装の為に開発されたオントロジの主要な役割は、情報の相互互換(構文、構造及び意味の橋渡し)を実現する事であり、ロジックプログラミングはあまり必要とされない。他のオントロジ開発の場合は、広い知識対象領域でビューを共有する事が、計算能力の付加及び知的推論機能を広範囲で増加させる為には重要なので、よりトップダウン的なアプローチが採用されるかも知れない。後者の人々に取っては、任意の数の領域オントロジの為の基盤を提供すると言う構想の基に企業規模の共通上位オントロジを作ると言うのは重要な考え方である。この場合、新たな領域オントロジは、その上位オントロジの拡張であり、且つ、その上位オントロジに準拠する事が可能である。既存のオントロジや昔のデータモデルは、この上位オントロジに対応するものである。理論的には、領域横断的な高度なセマンティック相互互換を達成するのに最小ステップ構成でそれを行うことができる。(しかし、依然として付加的な開発や作業が、このアプローチの実現可能性やスケーラビリティを実証するために必要とされるという事に注意されたい。)

 

 現在幾つかの上位オントロジの候補が存在し、例えば、DOLCE(Gangemi, et al., 2002), Upper Cyc(Lenat, 1995)及びSUMO(Niles and Pease, 2001)があるが、しかし、これ等の何れもマーケットでの確固たる地位を獲得してはいない。これ等の上位オントロジアプローチの支持者達は、米国国防総省及び/又は連邦政府でこれら候補の一つを採択すると信じている。今は産業界がこの技術をフォローする良いチャンスであり、米国はそれが出来たあかつきには、それを標準としてISOに提案するであろう。

 

 領域特有のオントロジが存在しない場所であっても、既存のタクソノミ、XML標準若しくは他の低次のデータモデルを活用することにより、オントロジ開発をジャンプスタートさせることは可能である。連邦政府レベルで、知識管理の作業グループ(http://km.gov)は、機関横断型のタクソノミプロジェクトに関する情報共有化に著しい進展を見た。XML.Gov(http://xml.gov)は、利用可能文書及びデータのシームレスな共有を可能にする為、機関横断のXMLの効率的且つ効果的な利用機能の実現をミッションとしているが、多くの政府機関が既存のタクソノミを持っているか、あるいは、自分たちの情報領域向けのタクソノミの開発を始めている。例えば、JusticeXMLは興味深いプロジェクトであり、より柔軟なデータモデルを提供するためにRDFOWLによって拡張され強化されており、連邦政府、州及び地方の法の執行の情報を他の機関がより簡単にアクセスできるようにする道を拓く試みである。

 

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